「死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明」を発表
7月26日、法務省が死刑確定者6名の死刑を執行したことについて、真宗大谷派では同日付で、宗務総長名による宗派声明を発表しました。
死刑執行の停止、死刑廃止を求める声明
本日7月26日、7月6日に引き続いて、東京拘置所で3名、名古屋拘置所で2名、仙台拘置所で1名の死刑が執行されました。
オウム真理教が起こした事件によって亡くなられた方々に、あらためて哀悼の意を表するとともに、遺族、被害者の皆さまの悲しみや、今なお後遺症・心的外傷後ストレス障害などで苦しんでおられる方々の心情を思うとき、言葉を失います。
先般の死刑執行に対し、各界からもその異常さに異議をとなえる声が届けられています。それは、事件の真相や問題の本質を不明のままに終わらせようとするありかたに危惧を覚えたからに他なりません。それにもかかわらず、1ヵ月に2度もの死刑が執行されるというその性急なありかたに疑問を抱かずにはおれません。
その一方で、あらためて教祖に無批判に追従した青年たちを思うとき、現代を生きる人々の悩みや苦しみにいかに応えていなかったかが知らされます。今一度、仏教者としての責任を問い直し、今後もこの事件によって問われたことを究明し、真摯に向き合っていかなければならないと考えています。
私たち真宗大谷派は、どの人も救うと誓われた阿弥陀の本願の教えに基づき、広く社会に対して、死刑執行の停止と死刑制度について論議していくことの大切さを呼びかけてまいりました。罪を犯した者のいのちを奪う死刑の執行は、根源的に罪悪を抱えた人間の闇を自己に問うことなく、他者を排除することで解決とみなす行為にほかなりません。そのことは決して真の解決とはならないでしょう。死刑制度は、罪を犯した人がその罪に向き合い償う機会そのものを奪います。また、私たちの社会が罪を犯した人の立ち直りを助けていく責任を放棄し、共に生きる世界をそこなうものであります。
ここにあらためて、今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、今後は死刑執行を停止することを強く求めます。そして死刑制度についての論議が広がり、廃止に向けての取り組みが進められることを願います。
2018年7月26日
真宗大谷派宗務総長 但馬 弘