【レポート】聖教学習会(姫路開催)
教区教化委員会「教学・研修部門」では教学の研鑽を深め、「人の育成」に資することを願って、教区内の二会場で聖教学習会を開催しています。
今年度は、教区同朋会館姫路会場で「大乗の仏道と空(くう)思想~『大智度論(だいちどろん)』を読む~」(講師:親鸞仏教センター研究員 戸次顕彰(とつぐけんしょう)氏を、また、広島会場で「浄土真宗との出遇い」(講師:加賀市光闡坊住持 佐野明弘(さのあきひろ)氏をテーマに開催しました。この記事において、姫路会場で行われた学習会の内容(要旨)を紹介します。
まず、釈尊のあきらかにされた”全ての存在は、他との縁によって生起する”という「縁起(えんぎ)の教え」と、親鸞聖人が七祖のひとりと仰がれた龍樹(りゅうじゅ)の説く「空の思想」とは、どのような関係をもっているのか。また、龍樹の思想を、親鸞聖人はどのように受け止められたのかなど、龍樹の著作と伝えられる『大智度論』(『般若経』の注釈書)をとおして、三回(十二月二六日、二月二一日、五月二〇日)にわたって連続講座を開催しました。
講義の中で、戸次氏は「私たちは、浄土真宗の教えのなかに身を置きながらも、「般若」や「空」といった大乗の仏道と、身近にある”真宗という仏道”とがどう繋がっているのかという関係性がなかなか見えてこない。そこで大乗の仏道体系と併せて考えてみたいという趣旨で、今回、”大乗の仏道と空思想”というテーマのもと、『大智度論』をテキストとした」と述べられた。
また、「正信偈」にもふれ、その前半では、親鸞聖人が『無量寿経』をはじめとする浄土経典の心を”偈頌(げじゅ)”の形で述べ、後半では、印度・西印度(西天竺)の論家、また中国や日本の高僧方が、お釈迦さまが世に出現した本意を明らかにされると共に、如来の本願が人々(機(き))に応じて説かれたものであることを述べられておられます。
就中、「釈迦如来楞伽山 為衆告命南天竺 龍樹大師出於世 悉能摧破有無見」(正信偈)とあるように、釈尊の教えから龍樹の思想への展開の中で七高僧を説明されていることにも注目すべきであろうと押さえられた。
また、「正信偈」には、「悉能摧破有無見」(ことごとく、よく有無の見を摧破せん)とあります。親鸞聖人は、直接、「空」ということは言われませんが、「正信偈」の中で「空」と関連しているのが、「有無の見を摧破せん」と述べられているところです。つまり、「有る」とか「無い」とかいう人間のもっている見解を打ち砕いてかれます。そして、「大乗無上の法を、尊い教えを、人々に説かれました」と結んでおられます。
講義の終盤には、般若波羅密(はんにゃはらみつ)を中心とする高度な菩薩行が、人間の生き方に何を問いかけているのか、という問題にも言及がありました。(教学・研修部門委員 長谷岡 英信)