特別リレーコラム

【教区教化テーマ リレーコラムVOL8】

「温もりのあるお寺をともに」というテーマがどのようなところから湧き上がってきたのか私はわかりませんが、温もりというからには今のお寺はなにか冷たいという感覚があるのだろうと思います。さらに創造と回復という言葉からは「昔のお寺は温かくてよかった、だからもう一度それを創っていきたい」という思いが浮かび上がってきます。もちろんそれはとても正直な気持ちなのかもしれません。それは単にお寺ということだけにとどまらず、いま生きている社会そのものに対してもそういう思いがあるのでしょう。しかし本当に昔は温かくて反対に今は冷たい、とう感覚的なものだけで教区の教化活動をしていってもいいのかということを思います。ひとつひとつの出来事や人と人とのつながりを自分の都合によって良かったり悪かったりしてしまうのが私たち人間だろうと思います。そんな自分の姿を照らし出し、自分がどのような社会に生きていきたいのかを顕かにしてくれるのが浄土の教えだろうと思います。

私たちが今聞いている教えはいつどの時代にあってもそこに生きる人を救おうとするものでなければならないと思います、そのことをはっきりとさせなければ私たちは教えさえも自分の都合によって変えてしまうということがあるのだと思います。

五濁とは阿弥陀経にもあらわされ、それを宗祖は正信偈でも五濁悪時群生海とおかれます、それは私たちが生きている今もまた五濁のときなのだと教えられます。しかしその「濁り」さえも見えなくなってしまっている社会の中でお寺というものが本当の冷たさを知り、また本当の温かさを持つものとして今あってほしいということが過去と未来から願われているのだと思います。

(社会問題部門部長 中杉 隆法)