40年ほど前、当時大学生だった私は毎年夏休みになると、前坊守と一緒に日曜学校の子供たちを引率して本山で開催していた「山陽教区児童夏のつどい」に参加していました。しかし当時の私の夏休みといえば、寺に数人の仲間が集まりダラダラと朝まで過ごし、そのままごろ寝して昼ごろ起きる気ままな生活です。それが朝6時に起床して元気いっぱいの子供たちの世話を一日中する生活に急変するので、身も心も疲れ果てて、終了後に帰宅すると丸一日寝込んでいました。

 そんな自分がまさかその後20年以上も「夏のつどい」に携わるとは。あらためて振り返ってみれば、先輩方と仲間と子供たちに「ともに」励まされ育まれてきた歩みでした。 あれから瞬く間を経てきましたが、ここ暫く毎年、夏休みになると近くの中学校の先生がお寺に訪ねて来られます。一年生の総合的な学習の時間での「地域の宝調べ」に協力してほしいとのご依頼です。地域にある神社仏閣・旧跡・古い建造物などを班毎で調べて文化祭で発表するそうです。事前に班の生徒さんから、このお寺に対する質問を受けて、後日その生徒さんたちに住職が答えるという総合学習です。

 もう10年は続いていますから、毎回同じような質問があります。「お寺の名前の由来」「いつ出来たのか」「誰がこのお寺を作ったか」という「お寺の歴史についての質問」と、「このお寺は何をしているのか」「どんな仕事か」という具体的な「お寺の現状についての質問」です。中には少し答えに窮する質問もあります。「いつもお寺に居るんですか」「どうしてお坊さんになったのか」「このお寺をつくるのに、どれくらいのお金がかかったのか」等々。ところが、毎年そのような質問を通して、自分にとってお寺はどういう場所なのか、自分がお寺で何をしているのか、再確認させてもらうことができ、緊張しながらも楽しみにしています。

 今年も「地域の宝調べ」が終わりました。そこで以前にも尋ねられていたけれど、今回あらためて大事な問いかけだと気づかされた質問がありました。それは「このお寺で大切にしているものは何ですか」という質問です。今までは「ご本尊の阿弥陀如来、南無阿弥陀仏ですよ」と答えていました。そして今年もそのように答えるつもりでした。しかし当日やってきた10人の生徒さんたちを見たとき、ふと「この子たちのように、このお寺に訪ねてきてくださる、今までもたくさんの人が訪れてくださった、そんな人こそが、このお寺にとって本当に大切なものなんじゃないか」と思ったことです。そこに人がいる、その人に出遇い、人に育まれていく。そんな場がここにある、そのことが嬉しい。ありがたく深いご縁を感じた夏休みでした。(備後組光圓寺住職 河野教明)